会議の議事録、ChatGPTに任せられたら楽なのに。そう思いながら、手が止まっていませんか。
録音を聞き直して、文字にして、要点をまとめて、体裁を整える。1時間の会議なのに、議事録づくりに1時間以上かかることも珍しくありません。ChatGPTを使えば数分で終わると聞いても、頭をよぎるのは「この内容、入力して大丈夫なのだろうか」という不安ではないでしょうか。
- 毎回1時間以上かかる議事録づくり
- 情報漏洩への漠然とした不安
- 患者さんのお名前をどう扱うかの迷い
- 相談できる相手がいない心細さ

議事録をChatGPTにお願いしたいんです。でも患者さんのお名前が入っていて、入力しても大丈夫なのか不安で…。

その心配はもっともです。でも大丈夫。何を入れないかを先に決めておけば、安全に使えますよ。
結論からお伝えします。やり方さえ守れば、ChatGPTで議事録を作っても情報漏洩は防げます。大切なのは「何を入力しないか」をあらかじめ決めておくことです。
考え方はとてもシンプルです。患者さんの情報をメールで誤送信してしまったら困りますよね。AIへの入力も、それと同じ重さで考える。突き詰めれば、それだけです。
この記事では、医療現場で働く私が実際に使っている5つの手順を順番にご紹介します。今日の会議からそのまま使える内容です。
ChatGPT議事録の情報漏洩リスク

まず、なぜ情報漏洩が起きるのかを知っておきましょう。仕組みがわかると、どこに気をつければよいかが自然と見えてきます。
ChatGPTは「入力した内容が、そのまま外部に公開される」わけではありません。危ないのは別のところにあります。入力した文章がAIの学習に使われ、その結果が巡り巡って他人への回答に影響する可能性がある点です。ここを正しく理解しておけば、必要以上に怖がる必要はなくなります。
入力内容が学習に使われる仕組み
ChatGPTには、利用者の会話をAIの改善に使う設定が初期状態でオンになっています。OpenAIの公式ヘルプでは「すべての人のためにモデルを改善する」という名前の項目です。
この設定がオンのまま議事録を貼り付けると、その内容が学習の材料になり得ます。ただし、あなたが入力した文章がそのまま他人の画面に表示されるわけではありません。あくまで「一度入力したら、こちらでは回収できなくなる」と考えておくのが実務的です。
つまり、漏洩を防ぐ勝負どころは入力する前の段階にあります。
議事録に含まれやすい個人情報
議事録は、思っている以上に個人情報の宝庫です。自分では気づきにくいものを挙げてみます。
- 患者さんの氏名、年齢、病名、入院日
- 職員の氏名、役職、所属部署
- 特定の患者さんを指す言い回し(「先週の緊急入院の方」など)
- 取引先や業者の担当者名
- 会議の参加者一覧
注意したいのは3つ目です。名前を伏せても、状況の説明だけで個人が特定できてしまうケースがあります。小さな職場ほど、この危険は高くなります。
実際に起きた漏洩事例
2023年、サムスン電子で従業員がChatGPTに社内の機密情報を入力してしまう出来事がありました。報道によると、入力された内容にはソースコードのほか、会議の内容も含まれていたとされています。
悪意があったわけではありません。仕事を早く終わらせたかっただけです。ここが怖いところで、情報漏洩の多くは「うっかり」から起きます。だからこそ、意志の強さではなく手順で防ぐ必要があります。
情報漏洩を防ぐ5つの手順

ここからが本題です。私が実際に議事録を作るときに踏んでいる手順を、順番にご紹介します。
どれも特別な知識は必要ありません。最初の1回だけ設定をして、あとは毎回同じ流れを繰り返すだけです。慣れれば追加でかかる時間は1分ほどでしょう。その1分で、取り返しのつかない事故を防げます。
手順1 学習オフ設定の確認
最初にやるべきは、入力内容を学習に使わせない設定です。これは無料プランでも変更できます。
- 画面右上のプロフィールアイコンをクリック
- 「設定」を選ぶ
- 「データコントロール」を開く
- 「すべての人のためにモデルを改善する」をオフにする
スマホの場合は、サイドバーメニューからプロフィールアイコンをタップし、「データコントロール」を選びます。一度オフにすれば、パソコンでもスマホでも設定が反映されます。
なお、この設定をオフにしても会話履歴自体は残ります。履歴も残したくない場合は「一時チャット」を使う方法もあり、こちらは30日後に削除されます。
手順2 固有名詞の置き換え
次に、貼り付ける前の文章から固有名詞を消します。削除ではなく「置き換え」にするのがコツです。
- 患者名 → 患者A、患者B
- 職員名 → 看護師A、事務B
- 部署名 → 部署X
- 病院名・施設名 → 当施設
削除ではなく置き換えにする理由は、話の流れが崩れないようにするためです。名前を消しただけだと「誰が何を言ったか」がわからなくなり、AIの要約精度が落ちてしまいます。記号に置き換えておけば、できあがった議事録の記号を実名に戻すだけで完成します。
置き換えはWordやメモ帳の置換機能を使えば一瞬で終わります。
あわせて、記号をそのまま扱うようAIに伝えておきましょう。冒頭にこの一文を置くだけで、勝手に実名らしきものを補われる心配がなくなります。
これから会議の文字起こしを渡します。
文中の「患者A」「看護師B」などの記号は実在の人物を指しません。
記号のまま扱い、実名に置き換えないでください。
議事録そのものを作らせる指示文は、【そのまま使える】ChatGPT議事録プロンプトと個人情報の消し方でまとめてご紹介しています。コピーして使える型を3つ用意しました。
手順3 必要な範囲だけ入力
文字起こし全文をそのまま貼り付ける必要はありません。議事録に必要なのは、決まったことと次にやることだけです。
雑談、個別の患者さんの相談、人事に関わる話。こうした部分は議事録に載せないのであれば、そもそも入力する必要がありません。入力しなかった情報は、絶対に漏れません。これが最も確実な対策です。
手順4 出力結果の確認
AIが作った議事録は、必ず自分の目で読み返してください。確認したいポイントは3つあります。
- 置き換えたはずの実名が残っていないか
- 発言していない内容が補われていないか
- 決定事項が事実どおりか
2つ目は特に大切です。AIは文章として自然になるよう、書かれていない内容を推測で補うことがあります。会議で決まっていないことが決定事項として書かれていたら、それは事故のもとになりかねません。
手順5 職場ルールの確認
ここまでの手順を守っていても、職場のルールが優先です。
近年、医療機関でも生成AIの利用ルールを定めるところが増えてきました。「個人が特定される情報は入力しない」といった内容が一般的です。まだ確認していないなら、上司や情報システム担当の方に一度たずねてみてください。ルールがある職場で、それを知らずに使うのが一番危険です。
医療現場で実践している工夫

ここからは、私が個人的に決めているルールをお話しします。
一般的な記事では「個人情報を入れない」で終わっていることがほとんどです。ただ、実際に医療現場で働いていると、それだけでは足りないと感じる場面に出会います。私が線を引いているのは3つ。この基準を持つようになってから、迷う時間がぐっと減りました。
入力しないと決めている3つの情報
- 個人情報、および個人が特定できる内容
- 施設の内情に関わること
- まれで特殊な疾患に関する記述
2つ目の「施設の内情」とは、人員体制の課題、設備投資の予定、部署間で意見が割れている話などを指します。個人名が一切出てこないため、「個人情報を入れない」という基準だけだと、つい入力してしまいがちです。
けれども、これらは外に出れば職場に迷惑がかかる情報には違いありません。個人情報かどうかという基準だけでは、こうした情報を守りきれないのです。
名前を消しても特定される場合
3つ目の「まれで特殊な疾患」は、医療現場ならではの視点かもしれません。
氏名を伏せていても、珍しい疾患名がひとつ書かれているだけで、地域や施設によっては個人が絞り込まれてしまいます。患者さんの数がもともと少ないため、「名前を消したから大丈夫」とは言い切れないのです。
ここは、一般企業の情報管理とは事情が違うところでしょう。医療の情報は、断片からでも人にたどり着いてしまいます。
メール誤送信と同じ基準で考える
私がこの基準を持つようになったのは、あるとき、ふと気づいたことがきっかけでした。
AIに情報を入力することは、患者さんの情報をメールで誤送信してしまうのと、同じ重さではないか。
メールの誤送信は、送った瞬間に取り返しがつきません。相手の受信箱に届いてしまえば、こちらから消すことはできない。AIへの入力もまったく同じで、送信したあとに「やっぱりやめます」は通用しないのです。
そう考えると、判断はとてもシンプルになります。誤送信したら困る情報は、AIにも入力しない。難しい知識はいりません。医療事務や看護の現場で、すでに身についている感覚をそのまま使えばよいのです。
よくある質問

無料版でも学習オフにできるのか
できます。有料プランに入る必要はありません。設定画面の「データコントロール」から、いつでも変更できます。
一度入力した情報は消せるのか
チャットの履歴を削除することはできます。ただし、すでに学習に使われた分をさかのぼって取り消すのは困難です。だからこそ、入力する前の確認が重要になります。
音声ファイルを直接読ませても安全か
音声にも当然、実名や個人情報が含まれています。文字起こしをしてから不要な部分を削り、そのうえで貼り付けるほうが安全です。手間は増えますが、何が入力されるかを自分の目で確認できます。
職場が生成AIを禁止している場合の対応
禁止されているなら使わないでください。個人のスマホやアカウントで会議内容を扱うのは、最も危険なパターンです。どうしても業務を効率化したい場合は、正式に相談して職場としての導入を検討してもらうのが正しい順序でしょう。
Copilotなら安全に使えるのか
法人向けに契約したサービスは、入力内容を学習に使わない設計になっているものが多くあります。ただし、同じ名前でも個人向けと法人向けでは扱いが異なります。職場が契約しているサービスかどうかを、必ず確認してください。
まとめ
ChatGPTで議事録を作ることは、正しい手順を踏めば十分に安全です。今日お伝えした内容を振り返ります。
- 設定で「すべての人のためにモデルを改善する」をオフ
- 実名は記号に置き換えてから貼り付け
- 議事録に不要な部分は入力しない
- できあがった文章を必ず自分の目で確認
- 職場のルールを最優先
いちばん大切なのは、「入力しなかった情報は漏れない」という当たり前の事実です。難しい技術の話は必要ありません。貼り付ける前にひと呼吸おいて、消せるものを消す。それだけで、リスクの大半はなくなります。
まずは今日、設定画面を開いて「データコントロール」をオフにするところから始めてみてください。1分で終わります。
設定が済んだら、次は実際の作り方です。【そのまま使える】ChatGPT議事録プロンプトと個人情報の消し方で、コピーして使える指示文と、思った形にならないときの直し方をご紹介しています。次の会議から、議事録づくりの時間が変わるはずです。

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